探求 現代の国語/探求言語文化 付属教材・資料見本
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2本文研究…本文をさまざまな角度から分析・解説しました。 「伊勢物語」は一人の作者によって一時期に書き上げられたものではない。「古今和歌集」(九〇五年)成立以前に少ない章段で原型が作られ、その後数次にわたって増補・付加・改変され、しだいに現在の形に近づいてきたものと考えられている。したがって、作者は不明というほかない。原型の作者としては業平自身・紀貫之が有力視されているが、いずれにせよ、成立に関わったのが業平を敬愛する人々であったことは間違いないだろう。で連鎖していると言えよう。 題材の多くは恋愛である。その中でも、二条后物語・斎宮物語の二つの悲恋は特に印象的である。恋愛以外では、業平と縁続きで不遇な皇子だった惟喬親王との交流を描いた章段「小野の雪」も読者の心を打つ。そのほか、親子の情愛や交友のありさまなど題材は多岐にわたっている。 主題は、第一段に見える「みやび」だと言われるが、その内容把握は諸家で意見が分かれている。第一段に焦点を絞って、情動を歌という言語秩序に転位することによって心の流露を求める態度が「みやび」であるとした秋山虔氏の見方は参考になる。秋山氏はまた、「みやび」は一面的な風流ではなく、好色性と道徳性という互いに否定し合う両義性を抱えた、生に根ざしたしたたかなものだとも説明している。伊勢物語(芥川)教科書(六五〜六六)「昔、男ありけり」「昔、男」「昔、」などの書き出しによって一つ一つの章段がはっきりと区別され、歌を中心とした百二十五段(伝本によって異同あり)で構成されている。各章段は、「男」を主として語り起こされ、その心情を表明する歌が示されるという形式でほぼ統一されており、その主人公の「男」をすべて在原業平と見なす享受が古来なされてきた。全体の構成から見ると、第一段の「初冠」に始まり、最終段の「つひにゆく道」(臨終)で終わる「男」の一代記と捉えることができる。ただし、一代記といっても章段の配列は堅苦しいものではなく、緩やかな脈絡物語と軍記作者と成立構成・内容2 本文研究    64*言語文化 指導資料(古文編)

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